機動戦士ガンダムUC

テレビ放送と有料配信で全話見たので感想を。傑作でした。

ネタバレを含む感想は後で書くとして、最初は当たり障りのない部分を。

ガンダムのシリーズは、テレビの再放送を見た事があったり、ゲームのスーパーロボット大戦などにも出てくるので、話はぼんやりとは知ってはいたのですが、何で地球連邦軍とジオンが戦っているのか、についてはいまいち分かっていませんでした。

UCでは、その辺が最初の方に明確に描かれていて、争う動機が分かりやすく、その分話に厚みが感じられるようになりました。

これ見るまで知らなかったのですが、地球が人が住むにはまずい状況になっていて、宇宙を開拓してそっちに住んだり、地球の支援をするために移民団を出した。この辺の人には、犯罪者だとか差別階級なんかも含まれていた……という辺りから、危険な仕事を押しつける感じで追い出したようなニュアンスもあります。

宇宙の開拓は無事に済んで、逆に宇宙側が発展しだした、という辺りからちょっと風向きが変わります。宇宙に行った人たちはスペースノイドと呼ばれ、自治権は認められず、選挙権なども与えられなかった。

この辺で、支配する地球側と虐げられる宇宙側、という構図が出来て、前者が地球連邦、後者がジオン、となっていく、という流れが説明されていました。

その後、宇宙に出た人たちの中から新人類、ニュータイプが出て来て、厄介な事になっていき、戦争が絶えなくなるのが大きな流れっぽいです。

初代のガンダム~Z~ZZと行って、紆余曲折あった結果、地球連邦の支配力は圧倒的になる訳ですが、これを覆す力のあるものとして「ラプラスの箱」というものが出て来ます。このラプラスの箱を巡る物語がUCのストーリーになります。

主人公の少年バナージとオードリーという少女が出会って、ガンダムに乗り込み、物語に巻き込まれていく、という所は王道な展開ですが、この後が少し毛色が違います。

今までは、どちらかというと個人間の感情がメインの人間ドラマが多かったように思います。エゴの描写というか。今回はもう少し大きい、色々な立場の人と関わり合う事になり、その人のバックグラウンドまで含めた、人の話です。

特に大きく描かれているのが、父と子の物語でしょう。実父も含め、バナージは多くの父親役の大人に道を示されたり、あるいはその正しいと思った事を為すよう背中を押されます。

少年は可能性を信じて立ち上がりますが、何度もその前に立ち塞がる大人であるとか、古いものに阻まれ、挫折し、諦めかけます。しかし、その度に父親が鼓舞し、可能性のために諦めずに立ち上がるために支え、力を添えていきます。

少女であるオードリーの方は理想を持ち、正しくあり続け、しかしこちらも多くの大人に翻弄されます。少年が支えとなる事を訴え、それを受け入れ、それ故に少年が折れそうになると、叱咤し激励し、共に進んでいきます。

幼かった子供たちが成長して確固たる信念を持ち、自立し、可能性を掴んでいく物語だと言えます。

大人はそれを支えるだけで良いし、そうして時代は継いでいくのだ、という話は、とても上質な物語でした。子供がいたり、会社なんかで部下を育てたりする立場にある人などにも見て貰いたい話ですね。

アニメという、荒唐無稽なスケールで描ける媒体だからこそ、凄く良い形で話が作り上げられたと思います。アニメでなければ難しい話なので、アニメが本当に好きな人にも勿論お勧めできるのではないでしょうか。

あと、進撃の巨人で知った口ですが、音楽担当の澤野弘之さんの曲は凄く良いですね。良いシーンで、良い音楽が流れるので、本当に感動します。澤野弘之さんの音楽が好きな人にも良いと思います。

あとはネタバレを含む感想を。見るつもりがある場合は、読まない方が良いと思います。

 

 

 

 

 

「ラプラスの箱」は、結局は本当は何でもない、ただのもののはずで、善意から出た祈りが、恐怖や欲望などから嘘で呪いにされてしまったものでした。その辺は冒頭で提示されている事からも明らかです。

早めに嘘について謝罪し、早めに箱を公開していれば、傷は浅かったのですが、これを隠し、嘘をつき続ける事でその後終わらない戦争の世の原因となってしまった。

どんどんその事実が重くなる事で、嘘を訂正するタイミングを失い、逆にこれを隠し続ける事に心血を注ぐ事になってしまった。嘘だったと公開する事で、世界が崩壊する事を恐れるようになった訳です。

ただ、これは大人の視点であり、若い人たちの視点では無い訳です。大人はそれまでの人生で積み重ねたものが大きく重くなっているため、それを捨てる事が出来なくなっている。

また、過去に縛られて今を生きられていない大人もいる。この辺も含めた象徴的な存在が、ジンネマンではないかと思います。

バナージを父親のように導き立ち直らせたり、バナージと協力して「娘」であるマリーダを救うような過去の人生経験の積み重ねによる厚さを持ちつつも、一方過去に家族を連邦に虐殺された事に捕らわれ続けている。

しかし、今度はマリーダによって救われ、過去から解放されて未来を生きる少年少女たちに力添えをする事を決め、自ら決めたその役割を果たしていく事になりました。

何十年と生きていると、過去を受け入れたり、捨てたり解放される事は難しい、と考えがちですが、実は未来を見るようにすればあっさりと出来る事で、そのためには子やそれ以外の若者に頼っても良いのだ、という事を、一番体現しているキャラクターだと思います。

バナージは、運命に翻弄される形で、地球連邦だけでなくジオンの側で過ごす事になったり、本来であれば難しいと思われる、それぞれの言い分や考えをしっかりと見聞きし、ただの敵ではなくそれぞれも人なのだ、という事を経験していきます。

その課程で、大人に導かれつつも、逆に大人も救い、希望を託され、またバナージが信じる可能性を肯定され、背中を押して貰いながら成長していきます。

この辺の展開は見ていて驚いた所で、しばらくの間ですが、ジオン側で働き、その結果としてロンドベルとジオンでの共同作戦を経て、最後は敵味方関係なく、過去に縛られて未来を阻むものと、可能性を信じる者という構図になっているのが斬新でした。

最後に立ちはだかる強大な敵としての、過去の総意の器であるフルフロンタルも象徴的で、器であるが故に可能性を理解できず、最後まで相対していきますが、最愛の女性であったララァと自分の魂であるシャアに触れて、それが何であるかを説かれて、バナージから感じたものを理解し受け入れ、道を空けます。総体としての器が、満たされる瞬間のような形ですね。

最後まで過去に縛られた者たちも、そのために最後の最後で新たな後悔を得つつも、可能性の力を見せつけられ、過去への拘泥を諦めます。

全てが終わった後は、それらの人物も憑き物が落ちたような表情をするのが印象的でした。

ラプラスの箱の出現した宇宙歴0001年から100年近い時間をかけ、少しの過ちから発生した大きな歪みを、その中で発生した呪縛も含め、困難を解決していく様は、可能性と希望の物語であると言えると思います。

ガンダムの歴史上は、これで以降平和が続いて万事解決、ではないようなのですが、初代で生まれたニュータイプ=撃墜王が、ニュータイプ=わかり合える人たち、と可能性に転じた所で一旦の幕が引かれ、長く続いた戦争の物語の幕引きとしてはとても綺麗な形に思いました。

ちょっと気になったのは、今回は父親のみで母親が不在でした(姉はいた?)が、その辺はターンAが女性の物語だったので、そっちはそれでという事で成り立つのかもしれません。

まあ、気になる点はあるとしても、とてもきれいな物語だと思いました。


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