電子書籍は貸本か?

電子書籍は、実際に本を買うのではなくて、貸本だ、などと言われます。

昨日、こんなニュースがありました。「ローソンの電子書籍サービス「エルパカBOOKS」終了 購入代金相当のポイント返金

なんで返金をするのでしょうか?それには今の電子書籍に理由があります。今回はちょっと長め。

電子書籍は、大体PDFなどの広く使われているファイルや、EPUBなどの仕様がオープンなものが採用されています。にも関わらず、ある電子書籍ストアで購入した本は、そのストアのアプリ以外では見る事ができません。

これはDRM(Digital Rights Management)、デジタル著作権管理の仕組みによる、コピー制限がかかっているためです。

DRMのかかった電子書籍は、鍵のかかった本(日記でよくあるようなやつ)です。ただし、鍵は購入者には直接渡されないか、有効期限があったり、鍵自体に更に鍵がかけられている場合があります。つまり、実は購入者は自由に読める状態にはなっていません。

ではその鍵は誰が持っているか、というと、電子書籍のストアを運営している所が持っています。電子書籍の購入者が、アプリで電子書籍を見ようとした際、ストア側から鍵が渡されたり、あるいは隠してあった鍵を取り出したりします。

これはアプリとサーバーが自動的にプログラムの処理で行うため、実際に購入者が何か操作をして、鍵の取得や解除を行う事は無いため、知らない人は知らないような仕組みになっています。

一応、フォローしておくと、実際には鍵がかかっている、というより暗号化されて、普通に開いても化け化けにしか見えないデータになっています。開けなくは無いが、開いても正常なファイルではない状態です。これを鍵を使って、復号し、復号するとデータは正常に扱える、というのがDRMの仕組みになっています。

PDFやEPUBは、ファイル自体は誰でも構造などが理解出来れば表示するアプリなどを作れるようになっています。DRM自体も、基本的には仕組みは一般に公開されている仕組みがあり、大体その仕組みをベースにやっているため、復号の流れ自体は処理を再現するのも難しくないでしょう。

DRMの肝は、鍵とその管理方法です。鍵、といっても、実際は鍵のような形をしているのではなく、もの凄く大きな数値です。このもの凄く大きな数値を、乱数で発生させて、簡単に類推できない値にするのがひとつ。

そして、鍵自体をどこに置いてあるか、置き場所からどうやって取り出すか、を秘密にしておくのがひとつ。鍵自体も、更に別の鍵を作って、暗号化しておき、鍵の置き場所がバレても、鍵として使うためには復号しないといけない、という状態にしてある事もあります。

これを、販売しているストア各社が秘密にしているため、ある所で買った電子書籍のDRMが、違うストアが出しているアプリでは見られない理由になっています。

何でこんな事をしているか、というと不正コピー防止のためです。音楽配信などでも以前はそうでしたが、DRMがかかっていたため、iTunesで買ったものは他のPCなどにコピーしても聞けない、等がありました。電子書籍でも、かつての音楽配信と同じ事をやっています。

不正コピー防止は誰のために行われているか、というとストア自身もそうですし、出版社、著者からの要求で行われている部分もあります。

ちなみに、もうひとつ余談ですが、きちんとDRM処理する場合、暗号化されたファイルを復号して、どこかにファイルとして置いてしまうと、復号したファイルは普通のまっさらなものなので、コピーしても見られるようになってしまいます。なので、復号は必要な分だけメモリ内で行って、表示したら復号したデータはすぐに破棄する、あるいはファイルをアプリの中からしかアクセスの出来ない、暗号化したディスク領域に置く、などの事をしています。復号した素のファイルをかっぱらう、という事がやりにくくしているので、不正コピーが出回る可能性がかなり低い状態になっています。

勘が良い人は分かると思いますが、これが返金に繋がる理由です。鍵を管理しているストアのサービスが終了すると、電子書籍購入者の手元に残るのは、自分だけでは読めなくなってしまう、鍵のかかった本だけになります。つまり、ゴミしか残らない訳です。

この辺が、電子書籍が貸本、と揶揄される所以です。あくまで、期限未定で貸し出された本が、許可された時だけ見られるような形になっているからです。

ローソンのエルパカBOOKSはかなり良心的な方で、Pontaポイントでですが、全額返金すると発表しています。購入者が買ったつもりのものが見られなくなるのだから、購入者側からすると当然だ、と思うかもしれませんが、サービス停止で全額返金するような所はかなり少ないです。楽天の場合は、一部返金止まりだったようです。

さて、電子書籍ですが、買っても見られなくなるようなリスクがある場合、購入する人が減るか、あるいはストア自体が長期に渡って存続する見込みがある所でしか買わない、という人が多くなってくると思います。

音楽配信のように、DRMを廃止するか、DRMをストア間で共通のものを使って、相互運用性のある形にしないと、ただでさえ出遅れている上、投資の判断もできずに中途半端な使い勝手のアプリやストアが林立している日本国内の状況は芳しくないと思われます。

似たような傾向のものとして、ソーシャルゲームやブラウザゲームの課金などがあります。そちらもサービス停止で課金したアイテム等は消えて無くなりますし、課金したお金も返ってきません。にもかかわらず、こちらは一時期に比べれば衰えたとはいえ、まだまだ課金する人も多いです。

一方、本は一部を除いて、どんどん売れなくなってきています。もはや、人の娯楽としてのお金の使い道や配分から、本は外れてきています。本自体が、消費者からは魅力の無いものになりつつあります。

まあ、正直これから潰れる国内の電子書籍ストアは多いと思うので、その場合にはローソンの今回のケースのように、返金などのケアをしっかりしていってくれると嬉しいですね。

書店や出版社も、Amazonを敵視しながらも国内でも手を組まないで対立したりするような状況は、衰退する一方なので、どこかで踏ん切り付けてもらいたいと思います。

眠くなってきてまとまりが無くなってきたため、この辺で。


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