灰と幻想のグリムガル level.3 思い通りに行かないのが世の中だと割り切るしかなくても

グリムガル3巻を読んだので感想を。

(多分)普通の高校生くらいの主人公が、突然異世界に飛ばされて記憶を失い、ファンタジー世界でパーティを組んでモンスターを倒すRPGもの。

というとよくある感じですが、本作がひと味違うのは、本当に普通の少年である事。この手のものだと、やたら能力が高くていきなり英雄級の活躍をする話が多いですが、そうではないので地味に努力していく話になっています。その中で、悩んで葛藤したり、あるいは失ったり、得たり、といった著者である十文字青氏の王道的な展開があります。

そういう意味で言うと、 自分がやったRPGの中だと、成長するとどんな強いモンスターも一撃で倒せてしまうようなJRPGより、ウィザードリーや特にウルティマオンライン(UO)に近い感じです。UOなんかは、本当に戦士一人でオークを倒せるようになるまで一苦労でしたし…。

そうした、強くないが故に、弱いモンスターを仲間と慎重に狩っていく事、それを背景に男女混ざったパーティの仲間との関係(軋轢であったり、異性としての意識であったり)、失敗した時の落胆、あるいは成功した時の高揚、少し強くなったと感じた時の油断や奢りが、後悔や絶望に繋がっていく話であると思います。

これは褒めているかどうか分からないのと、薔薇マリは一巻以外未読なのでまた違うのかもしれませんが、十文字青氏の作品は、人の思いとそれによって起こる問題で駆動される話が多いように思います。そのため、話の世界観がファンタジーであれ、SFであれ、その設定がちょっとおまけ的な感じで、あまり話に対する必然性というか、存在感が無い場合もしばしば。話としては、人を中心に据えたとても面白い話が多いのですが、世界観は正直どうでも良い事が多い印象を受けます。

ただし、本作に関してはモンスターを狩って生活をしていかなければならない、自分たちの能力が低い故にモンスターが自分たちと対等の存在であり、それ故にモンスターの生活圏や、思考などが丁寧に観察する事で描写され、モンスターにも生身感が出て来て、非常に世界観とマッチした作品になっていると思います。

3巻ではオークの砦に襲撃に行くという、UOであったような話ではありますが、主人公たちが下っ端故に突入までの課程や、突入後も緊迫感ある細かい描写となっており、非常に楽しめます。そこでも悩み、行動し、結果を得ていく事になるのですが、果たしてそれは望み通りのものなのか…といった展開です。

主人公のハルヒロの、普通に生活していた頃の知り合いであると思われるチョコといった人物が出て来たり、それに関連してまた物語も新たな展開があったり、また最後も気になる展開で、続刊も非常に楽しみになる一冊でした。

既刊で1~2巻があります。

また、タイトルからも「隣り合わせの灰と青春」からの影響もちょっと感じられる気も。こちらも名作だと思うので、電子書籍でも良いから復刊してくれると良いですね。


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